先日、拙ブログへの訪問者が15年めで、のべ1,700万人を超えました。いつもお読みいただき、ほんとうにありがとうございます。きょうは、このサイトの記事を制作するにあたっての楽屋落ち……、というか情報の収集からテーマの設定、取材あるいは関連する資料集め、現地の取材や撮影、そして原稿書きにいたるまで、拙ブログの楽屋裏(内情)について少し書いてみたいと思います。少しグチが混じるかもしれませんが、いままでそれに類することはほとんど書いたことがないので、それに免じてご容赦……。w
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先日、風呂に入っていたら、子どもたちが小さかったころ愛用していたカップを発見した。サンリオのキャラクター「KERO KERO KEROPPI(ケロ・ケロ・ケロッピ)」のイラストが入った、プラスチック製のカップだ。子どもたちは、小さいころこれで嫌々ながら歯磨きをしていたのを思いだした。
湯船につかりながら、昔の想い出とともに、何気なくカップのデザインをぼんやり見ていたら、とんでもないことに気づいてしまった。カエルのイラストの上に書かれた、キャラクターの名前が「ERO KEROPPI(エロ・ケロッピ)」になっていたのだ。(冒頭写真) 「そっか、子どもに人気のケロッピは、実はエロだったのか」……とすんなり納得しかかったのだが、すぐに「ちがうだろ!」と湯船でのぼせ気味の頭でも、さすがにハッキリと異常さを認識できた。おそらく、校正ミス(不良品の品質チェック漏れ)ないしはミスプリントだと思うのだが、同じ「エロ・ケロッピ」が世の中に何千個か出まわってしまわなかったことを祈るばかりだ。
ふだんから毎日、見慣れているもの、使い慣れているものは、改めてしげしげと眺めたりじっくり細部まで点検したりはしない。日常の風景の中に溶けこんでしまうと、そこに大きなミスや見落としなど“落とし穴”があることに気づかないのだ。日常的に作成する文章表現にも、ほぼ同じようなことがいえるだろうか。日々、同じようなテーマや関連する項目などで文章を書いていると、そこに入力ミスによる誤字脱字や、錯覚などによる誤記を見落としていることに気づかないケースがある。
以前、ご指摘を受けた代表的なものには、西を「東」と書き、東を「西」と書きつづけてなんら不自然に感じなかった、東京大空襲Click!の記事Click!があった。本人は東西を誤りなく書いているつもりなのだが、ご指摘を受けるまで錯覚に気づかなかった。また、つい右と左を逆にまちがえたり、西暦と元号の一致しないケアレスミスもときどきやらかしている。1985年が、「明治18」と書いてしまったこともある。(1885年が正しい) 事前の読みなおしで、“ヒヤリハット”のケアレスミスや勘ちがいを訂正したのは百度や二百度ではきかないが、事前に何度か目を通しているにもかかわらず、チェックをするりと抜けていく誤りや錯覚も少なくない。いわゆる、校正ミスや校正漏れというやつだ。
わたしは拙サイトの原稿を、仕事から午後8~9時ごろもどり夕食や風呂を終え、しばらくたった午後10時すぎからだいたい午前0時ぐらいまで、興が乗れば午前1時すぎまで書いていることがある。もちろん、毎日書いているわけでも、また書きつづけているわけでもなく、ときには本や資料を調べたり、疲れていればネットやBD、TVを見たり音楽を聴いたりしてボーッとすごすこともあるが、たいがい原稿にまとめるのは現在は深夜の時間帯だ。したがって、その記述には錯誤や入力ミス、おかしな表現がたくさんある……という前提で、翌日には必ず読みなおすことにしている。
原稿のテーマは、自分で本や資料を漁っていて偶然「見~つけた」となることもあれば、どなたからか情報や資料をお送りいただき、改めて詳しく調べはじめることも少なくない。あるテーマについての取材や調べものは、仕事がなく時間を終日たっぷり使える土・日・祝日などの休みにまとめて行なうことになる。だから、原稿を書くのはどうしても平日の仕事を終えたあと、深夜にならざるをえないのだ。つまり、仕事でアタマがけっこう疲弊してボケており、深夜の時間帯でミスや錯覚、思わぬテンションの高まりなどが起きやすい環境での文章表現となってしまう。
原稿を書いた翌日、サイトへ記事を「下書き」としてアップする前に、テキストのままもう一度よく読みなおし、しばらくしてからアップした「下書き」記事を、もう一度読みなおして公開することになる。以前は、サイトに「下書き」としてアップロードしてから、三度ないしは四度ほどは読みなおしができる余裕があったけれど、近年は記事のダラダラ長文化にともない、なかなか校正回数を十分に稼げなくなってしまった。だから、ときたま自分でも唖然とするほどの校正ミスが発生することになる。
いつだったか(ずいぶん昔だが)、当時、鎌倉にお住まいだった校正のベテランの方から、「広辞苑は校正ミスだらけなのよ」とうかがったことがある。『広辞苑』は、岩波書店から出版されている日本でもっとも信頼性が高いといわれている机上辞典だ。彼女は校正のプロフェッショナルとして、何十年間にもわたり『広辞苑』を校正しつづけてきたが、校正のたびに誤植や誤字脱字、表現の誤りなどを発見して、いっこうにミスが減らないのを、半ば自戒をこめて「ミスだらけ」と表現したものだろう。“校正の神様”と呼ばれるようなプロでさえそうなのだから、わたしの一度や二度の読みなおしなど、まるでザルの目が校正しているようなものだ。
いまでこそあまり見かけなくなったが、平凡社の『大百科事典』レベルになると、いったいどれほどの誤りが存在したものか見当もつかない。お気づきの方もおられるだろうが、従来は紙媒体だったコンテンツや書類の電子化は、手作業による膨大な誤入力や誤変換をまねき、新たなミスを爆発的に増加させるリスクをともなうことになるのは、別に年金記録の課題に限らない。電子化された『広辞苑』や『大百科事典』は、いまだに紙媒体よりも校正ミスが多いのではないだろうか。くだんの“校正の神様”がチェックしたら、「誤りが増えてるじゃないの!」と怒りをあらわにされるのかもしれない。
ましてや、いい加減な校正で記事を書いている拙ブログなら、なおさらミスや見落としが多いだろう。もし、どこかの記事で誤入力・誤変換や錯覚、誤字脱字を見つけられた方がいらっしゃれば、「ああ、また深夜の大ボケ頭でまちがえてるじゃねえか、おきゃがれてんだ!Click!」と、ぜひやさしくご指摘いただければ幸いだ。それに加え、最近は歳とともに長時間の集中力が持続できなくなりつつあり、注意や意識・気力が散漫になることがしょっちゅうだ。本格的なAIエンジンを搭載した、パーソナル向けの文章校正サービスが早く現実化してくれるとうれしいのだけれど、そのころには文章表現自体もAIやRPAにおまかせ……なんて時代になったら、さすがにイヤだな。
「エロ・ケロッピ」のカップ、ちょっと棄てるのが惜しいので、そのまま洗面所へ置いておくことにした。同じカップをお持ちの方は、ぜひお手もとの「ケロッピ」をご確認いただきたいのだ。ひょっとすると、「ケロ・ケロ・ケロッピ」ではなく洗面所や風呂場で、あなたにエロい眼差しを向けている「エロ・ケロッピ」なのかもしれない。
◆写真上:「ケロ・ケロッピ」ならぬ、目つきが怪しい「エロ・ケロッピ」のカップ。
◆写真中:建設業者に樹木が伐られて破壊された、オバケ坂の上半分。「下落合みどりトラス基金」Click!が伐採直後から抗議をつづけているが、責任者である建築業者の代表は逃げまわって電話にさえ出ない。下の2葉は、下落合の風景。
◆写真下:下落合らしい風景のスナップショット。下のほうに掲載した写真は、わたしの安いデジカメでかろうじてブレずに撮影できる比較的大型の鳥たち。下落合には30種類を超える野鳥が確認されているが、いちばん下はどこまで大きくなるのかハトほどにも成長した、相変わらず逃げまわっている野生化したインコ。
この記事へのコメント
NO14Ruggerman
東京都の人口をも優に超えた数値なのですね。
オバケ坂、丸裸にされて悲しいです
サンフランシスコ人
心からお喜び申し上げます!
Marigreen
睡眠を削ってまでの原稿の見直し、文章を書くということはそれほど厳しい姿勢を要求されるのですね。
私は睡眠が足りず頭がザルの時は「この程度見直したらいいだろう」と無責任に校正ミスを一杯やってしまいます。プロ根性がないのだなぁと反省しています。
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
わたしも、学生時代から馴れ親しんだオバケ坂ですので、いまの惨状は悲しいです。左手に廃屋のある、昔の細い山道のような風情から、40年近く経過したんですね。
ChinchikoPapa
いつも、米国の日本映画情報をありがとうございます。今後とも、よろしくお願いいたします。
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
文章を書いている翌日に、朝イチの打ち合わせがあったりすると、やはり仕事が優先ですからどうしても文章が雑ではしょり気味になります。そういうときに、多種多様な“ヒヤリハット”ミスが入りこんできますね。
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
手がこんでる壁面のアートは、けっこう本気モードですね。廟の立像は、けっこう表情がリアルで少し気味が悪いです。「読んだ!」ボタンをありがとうございました。
kiyokiyo
こんばんは!
1,700万アクセス突破おめでとうございます^^
ブログを始めて15年ですか~
それは凄いことですよね。
ChinchikoPapaさんの記事は、とても内容が濃いのでご苦労されたことも多いのでは、と思っていました^^
果実酒は健康にも良いそうですね。
勿論ですが、飲み過ぎはいけませんけどね^^
僕も何か作ってみたくなりました。
やはり、定番の梅酒が良いでしょうか?
あっ!今年のお盆休みは、ChinchikoPapaさんの大好きなウイスキーを飲むことにしているんですよ^^
ChinchikoPapa
15年も飽きず懲りずに、よくやってますよね。^^; サイト管理の面から、外部リンクのSSL対応が昨夏から中途半端のままですので、今年の夏は時間ができたらそのつづきをやろうと考えてます。
果実酒は、梅酒がいちばん作りやすくて飲みやすいでしょうか。スーパーなどへ出かけますと、この季節は容器や角砂糖、ホワイトリカーなど道具・材料一式をセットで売っていますね。あとは、青梅を入手すればすぐに漬けられるので便利です。梅酒作りに慣れてくると、グミ酒とかビワ酒とかいろいろな果実酒に挑戦したくなりますよ。
ChinchikoPapa
pinkich
ChinchikoPapa
わたしも、ここの記事を書くために調べや取材をつづけていて、とても勉強になっています。^^ 片多徳郎の『風景』(1934年)、ようやく描画場所を突き止めましたので、今度記事に書きたいと思っています。片多徳郎の長崎アトリエから徒歩15分前後、東長崎駅からですと徒歩5分前後の大農家で、戦後すぐのころまで大ケヤキが残っていました。
ChinchikoPapa
サンフランシスコ人
http://english.ufl.edu/files/ENG_4936_3119_Turim.pdf
ENG 4936 HNR: History and Theory of Japanese Cinema
フロリダの大学授業.....
ChinchikoPapa
サンフランシスコ人
http://anthropology.columbian.gwu.edu/sites/g/files/zaxdzs1781/f/downloads/3709 fa 16 Yasuda.pdf
The aim of this class is to study aspects of Japanese culture through 1.) reading and discussing works of scholarship and journalism about Japanese values, beliefs, and customs; 2.) critically viewing cinematic works made in Japan,and 3.) analyzing how these films critique, celebrate, or otherwise depict their cultural contexts.
駐日大使だったキャロライン・ケネディの母親の母校...
ChinchikoPapa
『切腹』とか『楢山節考』などが日本文化を考える“教材”になっていますが、なんだか、まず「日本文化」の既存イメージ(こうであるべきという枠組みや結論)があって、それに合わせて“教材”選びをしているような感じがします。「切腹」をする階層(武家)など、近世の江戸期でさえ日本の人口比からいえば5%にも満たない人々の習慣ですし、「姥捨て」にいたっては山岳地帯における村落共同体の、さらに少数の近世的な一部慣習にすぎません。どれだけ日本文化として敷衍化でき、一般化できるかはかなり疑問ですね。
アヨアン・イゴカー
校正の重要さ、難しさ、大変さは自費出版した際に、出版社の担当者の方とやりとりしていて好く分かりました。そして、単語の選び方、統一性、文法以外にも、引用している文章の正確さなどについても、自分の安易さをいやと言うほど認識しました。出版業に従事している方とのやり取りは、非常によい経験になり、それ以降、辞書を引く回数、曖昧な知識をウェブで確認する回数が格段に多くなっています。
ChinchikoPapa
わたしも、ここへ文章を書くようになってから「原典あたり」が格段に多くなりました。イメージや印象ではなく、「事実としてそうなっているのか?」が気になりだしましたね。統一性や文法は、ハナから悪文なのであきらめていますけれど、せめて誤記や勘ちがいなどのケアレスミスは、少しでも無くしたいと考えています。
sig
単なる地誌に留まらず、古代史、美術、文学、風俗…まで多岐にわたる記事がいかに魅力的かという証だと思います。それらが相互に関連を持って時代が動いているということで、筆者の明晰な思考はシナプスそのもののごとくあちこちに触手を伸ばし、「これを書いたらあれも書かずば」と際限なく広がっていることでしょう。これがお仕事以外の成果と聞けば驚きも倍増です。
ChinchikoPapa
わざわざ過分のお言葉、たいへん恐縮です。14年半もやっていますと、ようやく未熟ながら地域のいろいろな側面を捕捉できはじめたのかな?……と感じています。
最近は、落合地域ばかりでなく、関連する周辺地域のエピソードや、落合地域に通じるテーマまで欲張っていますので、やや散漫になりがちですが、それが別の視角から落合地域を改めて見直すきっかけになったり、新しいテーマを発見したりする契機にもなっていますので、「急がば回れ」と焦らずのんびりと取り組むようにしています。
江戸東京の市街地についても、ときどき我慢できずに書いてしまうのですが、少々欲張りすぎですかね。^^;
サンフランシスコ人
HARAKIRI Saturday, July 19, 2014, 7:30 PM
http://sacjapanesefilmfestival.net/2014%20SJFF%20Flyer.pdf
『切腹』は、カリフォルニア州の日系人協会が、取り上げた映画ですし、仲代達矢自身も推薦したので、米国の大学の授業に出すべきです.....
ChinchikoPapa
たぶん、『切腹』で現代日本を理解しようとすると、のらりくらりと卑怯にもウソをついて逃げまわったり、「オレのどこが悪い?」と開き直る臆面のない人間が多々いるので、そのギャップに驚かれるのではないかと。w
kiyo
素晴らしいです。
ChinchikoPapa
なんだかリアルさがなく、実感の湧かない数字ですが、これからもつれづれいろいろなテーマを書いていきたいと思っています。
サンフランシスコ人
キャロライン・ケネディ....コロンビア大学ロースクール....
ChinchikoPapa
そうでしたか。キャンパスの様子を聞くと、男子よりも女子のほうが学生数が多い大学のようですね。
ChinchikoPapa
サンフランシスコ人
http://undergrad.admissions.columbia.edu/ask/faq/question/2514
What is the female to male ratio at Columbia?
Columbia is approximately 51% male and 49% female between the two undergraduate schools.
ChinchikoPapa
2018年の統計では、逆転しているようですよ。Wikipediaより。
>2018年現在の学生数は 32,429名、学部生の男女比は男性 48%・女性 52%
サンフランシスコ人
http://deptfordcinema.org/new-events/harakiri
仲代達矢出演の『切腹』.....10/27 ロンドンで上映...
ChinchikoPapa