「おっ、ここだここだ。・・・サ・エ・キーくーん!」
「・・・・・・」
「サ・エ・キーくーん!」
「・・・いま筆が、いっちゃん走っとるとこやねん」
「サエキくーん、いるかい!?」
「・・・誰やねんな、えろ~うるさいやっちゃな~」
「巴里で川瀬もと子Click!にも、ビーナスはん告白したてえ噂の、サエキくーん!」
「上落合の太宰治Click!みたいなやっちゃ。また、借金取りかいな・・・。ま~たあ~とで!」
「なんだい。やっぱり、いるじゃねえの」
「あのな~、どなたはんでっか? 金山センセのツケなら、佐伯アトリエへ行っとくなはれや」
「オレだよ、オレ」
「・・・あっ、ソミヤはんかいな」
「仕事の邪魔して悪(わり)いんだけどさ、しばらくここで一緒にいさしてくれよ」
「・・・あん? わしのアトリエで、暮らしてはんのとちゃいますのん?」
「そいつなんだがね、サエキくん。キミのアトリエ、まだ壁ができてないんだぜ」
「・・・はあ?」
「もうすぐ冬だてえのに、まだ壁もできちゃいねえのさ」
「さよか~、そら困りまんな」
「いつできるの?・・・って訊いたら、来年の4月までにはなんとかてえ、ベラボーな話さね。じゃあだんじゃねえや、さすが、夏に弱くって冬は強(つえ)えあたしでも、参っちまったんだ」
「4月ゆうたら、冬が終わってまうがな」
「それにさ、金山のじいちゃんが1日じゅう踊ってるとくらあ。こっちは静臥どこじゃねえやな」
「最近はな~、チロリアンダンスClick!ゆうのんに凝ってる~言うてはりましたわ」
「大概(てえげえ)にしてほしいぜ。そこでだ、サエキくん。折り入っての頼みなんだが・・・」
「あのな~、ここで一緒に暮らす~言わはりまんの?」
「20号40分Click!で絵筆も速(はえ)えけどさ、呑みこみもめっぽう早(はえ)えなぁ、サエキくんは」
「あのな~、わしは別にエエんやけど、杏奴Click!のママさんがな~、どないゆ~か・・・」
「ママさん、いいでゃんしょう? しとりぐらい増えてもさ」
(▽●☆彡◆□%×・・・)
「ほら、ママも、いいって言ってるしさ」
「・・・そやろか? わしには、ヒェーーーッ!ゆう声に聞こえたんやけど」
「キャー、下町のソミヤさん嬉しいわ! お待ちしてたんですのよ!って山手弁で言ったんだぜ」
「ほ、ほんまかいな? そうかいな?」
「ママさん、そうだな、あたしに甲州の大黒葡萄酒Click!ちょうだい。・・・ないの? じゃブレンド」
「・・・ほな、わしには冷コ、入れてくらはります~?」
(☆%★彡▲◇%○・・・)
「あのな~、ソミヤはんのぶんは、わしが払(はろ)うさかいな、ママさん、心配せんといてや~」
「ところで、サエキくん、いまどんなモチーフを描いてんだい?」
「それでんがな、ソミヤはん。いまの下落合はな、どこもキレイすぎて、面白(おもろ)ないねん」
「そりゃそうだ。ニワトリも馬も牛もいねえし、ウンコ水も流れて来なけりゃ牛乳屋のオッサンClick!もいなくなっちまった。あたしの嫌いなネコClick!ばっか、増えてやがるんだ」
「こん前な~、あるとこで、わしの絵ェにピッタリな家見つけてな、描いとったんですわ」
「ほう、久しぶりに下落合風景のモチーフ、見(め)っけたってわけだ」
「ほしたらな~、家の人が出てきて、わしが絵ェ描くのジーッと楽しそうに、見てはったんです」
「昔から、下落合はギャラリーClick!てえのが多かったからね」
「こんな家でも、絵になるんですかねえ?・・・訊かはるから、わし、なんやもう、めっちゃ嬉しゅうなってな~。そないなこと言われんの、巴里以来でんがな」
「巴里の裏町や公衆便所では、お巡りにさんざん言われた台詞Click!だよな、サエキくん」
「わし、文化村みたいなもん嫌いでんね、よう描きしまへんのや。鄙びて古くて、特にボロくてバッチイのんがエエんです~ゆうたらな、頭からバケツで水ぶっかけられましてん」
「・・・・・・」
「ほんまでっせ、ソミヤはん。ついでに、シベリア鉄道は好き~も、けしかけられましたんや」
「・・・それを言うなら、シベリアンハスキーだろうが、サエキくん」
「もう、ビックリでんがな」
「下落合も住みにくくなったもんさね、サエキくん。イヌならいいやね、こちとらネコだよネコ」
「そいえば、巴里で化け猫Click!ゆうのんがおったんですわ」
「下落合には、うじゃうじゃネコがいやがるんだよな、最近は。駐車場で寝てるとさ、ヤスリみてえな気味(きび)の悪い舌で、しとの顔をペロペロなめたりしゃがるんだぜ」
「あのな~、杏奴にな、最近クロッチClick!ゆうのいてるんやで。わし、好っきやねん」
「・・・サエキくん、どっかに石ないかい?」
「ほんでな~、それ以来な、下落合風景描くの、だんだん怖(こお)なりましてな。最近はな~、道にわしが立っとるだけでな、どうかわたしの家は描かないでくれ!・・・言わはる人もおんねんで」
「でもさ、よかったじゃないの、サエキくん」
「なにが、でんの?」
「いや、『下落合風景』シリーズが、水彩じゃなくて油でさあ」
「・・・あ、あのな~、ソミヤはん、そない問題とちゃう思いますねん」
「いやー、絵の具が溶けなくて、よかったよかった」
「わし、風邪ひくしな~、イヌには吠えられるしな、雨降りヴラマンクのセパード以来やで」
「そいつぁ、よかったよかった。ははは・・・。ところで、サエキくん、石ないかい?」
「ソミヤはんな~、ここ、笑(わろ)うとこちゃいますやん」
(◇▼◎%●彡▲#$・・・)
「おう、きたきた。へー、ママさん、注文受けてから豆挽くの。・・・どーりで、いい香りだ」
「ソミヤはんな~、ママさんはな、店先で漫才すのやめとくなはれ、ゆうてまんのん」
・・・というわけで、わたしのブログを読んでくださる方から、新しいキャラクター「ソミヤはん」をお送りいただいた。^^; もちろん、サエキくんを作ってくださったのと同じ方だ。なぜか「下落合」の旗を手に持ち 「中村彝アトリエ保存会」Click!のネーム入りTシャツを着ている。Tシャツのまん中には、1920年(大正9)に彝アトリエの南側ドアと庭を描いた、曾宮一念『庭先』がプリントされているのだ。なんだか妙な経緯から、サエキくんと一緒にカフェ杏奴で暮らすことになってしまったようなのだけれど、このふたり、なんとなく仲良し漫才コンビのような感じがしないでもない。
つまらない記事Click!を書いたため、かえってお手数をおかけしてしまったようで恐縮です。わざわざ、ありがとうございました。<(__)> ただし、この先、「ヨ」が付く方が登場しますと、わたしとしてはお話の展開・収拾に困ってしまいますので、なにとぞご容赦いただければ幸いです。(爆!)
■写真上:佐伯アトリエが工事中なのでカフェ杏奴へとやってきた、夏は苦手だけれど1年のうちで11月がいちばん元気な、わたしの故郷の隣り街である日本橋は浜町出身のソミヤはん。
■写真中上:左は、壁がまだできていないのに焦っている佐伯アトリエのソミヤはん。右は、駐車場になってしまった晩秋の曾宮アトリエ跡に、ポツンとたたずむソミヤはん。
■写真中下:1921年(大正10)の初夏以来の付き合いになる、サエキくんとソミヤはん。上左は、杏奴のクロッチとニラメッコするソミヤはん。下右は、ソミヤはんTシャツのクローズアップ。
■写真下:左は、88年たっても相変わらず仲がいいふたり。右は、Tシャツにプリントされている1920年(大正9)に中村彝アトリエで制作された曾宮一念『庭先』。階段の女性が、ナゾなのだ。
この記事へのコメント
sig
これは立派な講釈師ですね。W
でもこの情景は「見てきたようなウソ」ではなくて、二人がほんとに語り合っているようなリアリティがあって、笑っちゃいました。
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
nice!をありがとうございました。>kurakichiさん
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
いえ、これはまったく見てきたようなウソでして、佐伯は文化村も描いていれば、大きな美しい西洋館も(遠景ですが)、どうやら描いているようなのです。^^;
また、どこかに眠っている「下落合風景」には、アトリエ周辺や旧・下落合の西部のアビラ村ばかりでなく、山手線に近い東部(現・下落合)の街並みも(特に造成中の場所が)、描かれているのかもしれません。
ひまわり
行ったことあります。
下落合って、落ち着く喫茶店がちょこっとあるかも
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
最近、下落合界隈は再び「喫茶店」と表現したほうがよさそうな、落ち着いて話ができるコーヒーショップが増えてきましたね。80年代末あたりから90年代にかけては減りつづけ、代わりにファーストフード店が急増してました。目白駅界隈から中井駅の先(旧・下落合地域)まで、散歩をしながら地域密着型の喫茶店めぐりもできるようになったのは嬉しいです。
わたしは食事といっしょに酒は飲まないですが、寝る前には音楽を聴いたりPCに向かいながら飲むことがあります。ただ、最近はだんだん量が減ってますね。
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa