下落合のタヌキ君が、とうとうわが家の前の道にも出た。タヌキ君は、「現れた」でも「歩いていた」でも「姿を見せた」でも「いた」でもなく、「出た」というのがふさわしい。表情といい、その歩き方といい、どこかとぼけてユーモラスだから、人間のほうでもなんとなく気をゆるして、つい親しげに受け入れてしまう。そこがタヌキ君のつけめで、ちゃっかり鳥の手羽先だのラーメンだのをもらっては、満足そうに山へ帰っていく。
人間の食べるものは、たいがいはタヌキ君も食べるということで、ほとんど「食生活」に差異はない。廃棄予定のコンビニ弁当だって、美味そうに食べるのだ。だから、山の中にいても人里にいても、なんとか暮らしてゆけるのだろう。でも、うっかりアタマを撫でようと手など出したら、そこは野性だから噛みつかれて大怪我をすることになる。近所の子供たち、タヌキ君が道を歩いていても、触ったり追っかけたりしないで、そっとしといてあげよう。あと、クルマにも気をつけてほしいよね。
ところで、うちの近所には畑がある。大根や白菜、ネギ、ニンジン、キャベツ・・・etc.、いわゆる東京の「近郊野菜」と呼ばれる作物を栽培している。その昔、下落合大根は練馬大根よりも知名度が高く、特にその沢庵漬けは東京でも圧倒的なシェアを誇っていた。大正期には、ハワイまで輸出されている。売れすぎて大根が足りなくなると、練馬から不足分を調達していたというから、沢庵漬けの下落合大根はよほど甘くて美味く人気があったのだろう。その下落合大根が栽培されている畑をねらって、タヌキ君はやってきたのかもしれない。「タヌキが畑を荒らして困るので、なんとかしてくれろ!」と、畑の所有者であるSさんが新宿区へ訴えたらどうしよう。議題「タヌキの畑作地被害の実態について」・・・、新宿区の議場があっというまに下落合村議会になってしまいそうだ。そこはSさん、作物を商品として栽培し出荷しているわけでもなさそうだから、タヌキ君がときどきかじってしまうのを、なんとか見逃してやってはくれまいか。かじられた野菜(無農薬有機肥料がうれしい)は、わたしが相応の価格で引き取ってもいいから・・・。
この季節、うちの玄関や前の道に現れる動物には、人の気配を感じるとあわてふためいて逃げていくシマヘビ、緊張感ゼロのガマガエル、夜になると道に出てきてグァアグァアとおしゃべり散歩の好きなカルガモ夫婦、縁の下が大好きなアオダイショウ、みるまにモコモコ移動していくモグラ・・・などがいるが、そこへタヌキも加わったわけだ。下落合で暮らして30年近く、いまの区画に越してきて10年、だんだん動物が増えていくのはうれしいのだけれど、それに比例して近所の奥様方の「キャ~~ッ!」とか「ギャーーーッ!」とか、殺されそうな悲鳴も増えるのかもしれない。
下落合みどりトラスト基金
■写真:上はタヌキやカモがうろつく夜道、下はいまだ下落合大根が栽培されている畑。
この記事へのコメント
hedawhig
写真の畑主に蕗の葉を頂いたことがあります。 きっと微笑んでくれるんじゃないかしら?
後数日もすれば満月 狸にゆっくりしていていいのよ。 と言えたらいいのだけれど・・・少しずつ新宿に、武蔵野台地が増えてゆくこと、
毎夜夢に見ています。 月様に祈るしか術はないのでしょうか・・・
ChinchikoPapa
ひょっとすると、学習院の緑深いキャンパスにもいるのかもしれません。棲んでいるとすれば、湧水地近くでしょうね。
hedawhig
夜半、我が家から見えるHクラブ崖線丘、猫ではない大きなシルエットが動きます。 早く安全なところを見つけて欲しい。
ChinchikoPapa
エム
もちろん下落合のタヌキの話なのですが、新宿駅でもタヌキが目撃されていると言っていました。
ChinchikoPapa
下落合から西武新宿線に乗って、毎晩出勤し、歌舞伎町の残飯をたらふく食べたら始発で帰ってくるんじゃないでしょうね。(^^;;
ChinchikoPapa
TBS「新宿区は土地を買い取れなかった!」
低次元のスキャンダル番組だから、許されるものでもなく・・・・ 電波メディア他全般に言えることですが、意識認識、なんと言ったら好いか、解ってないのですね~
このことはとても大変重要なミスです。 どうするのでしょう・・・
かあちゃん
ChinchikoPapa
>かあちゃんさん
早朝から始まる番組で、新宿区が敷地の買い取りができず、「トラスト基金」の活動があたかも失敗した・・・というような内容で、おまけにメンバーの氏名を間違って報道するなど、ほとんどデタラメな放送だったようです。「報道のTBS」が聞いてあきれますね。
かあちゃん
私が見たのは「きょう発プラス」というお昼の番組でした。
タイトルは「新宿のたぬきをさがせ」だったと思います。
朝昼ともにそんな内容では、あきれかえると同時に腹がたちますね。
ChinchikoPapa
ChinchikoPapa
hedawhig
まったく、自然環境をどのように考えているのか? 言葉がありません。
興奮して、上の記事 名前を間違えてしまったではないですか!
hedawhig
hedawhig
流行の言葉で言うと北?並みの報道と言うところ。捏造であります。
「狸の病気が人に移って危険・・」「心配ですね」
どんな自然環境認識の方々なのか?
TBSの姿勢なんでしょうね。 何も解ってないと言うことでしょうか。
満月に怒って吠えたら・・・お月様が癒してくれました。
ChinchikoPapa
自然から乖離してしまった人間のセリフは、自然が身のまわりにあるところに暮らす人間からみると、ひどく滑稽に感じるのが、とてもよくわかります。(新宿・下落合でわかるとは、わたしも思いもしませんでしたが・・・) つまり、下落合の現状をまったく知らない人が(取材もしないで)、口先だけのヒョーロンをするからこういうことになるんでしょうね。その発言した方が誰かは知りませんが、「北海道に暮らすなんて、ヒグマに襲われたらどうするんでしょ?」というのと同じぐらいの、オバカで低レベルな言質だと思います。
ChinchikoPapa
かあちゃん
そんなわけで、hedawhigさん初めまして。私は北の国からの書き込みです(^^ゞ
私もPapaさんのおっしゃる通りだと思います・・
ChinchikoPapa
かあちゃんさん、わたし怖いけれど、ヒグマ見たい。(^^; 野生のツキノワグマは加賀で見たことがありますが、ヒグマは動物園でしか、まだ・・・。
hedawhig
TVの影響が怖いです。 ・・・弟の話ではTBSの誤報道は3分30秒・・・訂正放送は何分でしょう。
ヤマカガシ・・・伊豆でも怖い蛇の1番です。 そうですか、ヤマカガシがいるんですか。 やはりバッケは全ての生物の生きる場所なんですね。 郊外と比べると、本当に本当に小さな場所に・・・狸、ヤマカガシ、青大将・・・彼らはどんな風に人間を見ているのでしょうね・・・胸が痛いです。
どうしてこんな小さな場所を残せないのか?
hedawhig
署名用紙には遠方の方もいて、下落合に散歩に来る方が意外と多いことに驚きました。 明日は秩父に恒例の薇採り、山菜精進揚げでランチしてきます。
ChinchikoPapa
カフェ「杏奴」には、コーヒーを飲みながらなんでも書き込めるノートが置いてあるのですが、東京はおろか全国から下落合へ散歩にみえられる方たちが、いろいろな書き込みをしていきます。(^^
かあちゃん
ヒグマと共存する知床の漁師さんのお話です。人間はヒグマとだって共存できるんですよね。この番組から学ぶこと沢山ありました。感動(;_;)
http://www.htb.co.jp/vision/shiretoko/index.html
ところで、もう少し暖かくなったら友人宅のご近所にヒグマが現われるかもしれません。私が通っていた高校の近くなんですが、公園に親子連れのクマが出ると毎年大騒ぎです。・・ちなみにもう一人の友人宅の前には鹿が現われます。いつでもご案内しまーす(^▽^;)
ChinchikoPapa
といいますか、この「人間ビジョンスペシャル」シリーズそのものを、全部観てみたいです。アッツ島守備隊の日記が、米国で読みつがれているなんて、ぜんぜん知りませんでした。
おのふみと
新宿駅のホーム下に住んでいるタヌキもいるというのも、それで知りました。TBSさんは新聞だけ読んでおけば良かったのにねえ?!
ChinchikoPapa
それから、新宿駅のタヌキはホーム下に住んでいるのですか! ホームは「開発」されようがないから、タヌキ君もよほど考えましたね。・・・ホームレスにはならない。(><;☆\
おのふみと
う、うまい(^^;) ホントの「マイホーム」ってことですね
ChinchikoPapa
hedawhig
ヒグマHP・・・北海道綺麗でした! ありがとうございました。
綺麗な空気が運ばれたようでした。 溜息!
新宿の狸・・・たくさん! 子供の頃の絵本「山と町のねずみの話・・・」
他を知らなければ・・・生まれたところが故郷で、人も動物も同じ・・・?
人間らしく生きる環境、狸らしく、ヒグマらしく、シマフクロウらしく・・・らしくって何でしょう? なんだか解らなくなってきました。
ChinchikoPapa